内定承諾書を提出したあとでも辞退は可能?連絡方法はメールと電話どっち?

契約書
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内定承諾書、提出しましたか?

上司 書類提出

1次、2次、3次、役員面接をくぐり抜け、ようやく手にした内定。「やっと長い就活が終わった!これで解放される!」と思ったのもつかの間、企業から突然渡される書類があります。それが内定承諾書です、書類へのサインや捺印を求められます。

この内定承諾書とは、書面にて企業の内定を承諾することを確認するもの。書類には「正当な理由がない限り内定辞退はしない」と書かれている場合がほとんどです。したがって、「これにサインをしたら内定を辞退することはできないの??」と不安になってしまう人が多いのではないでしょうか?

果たして、内定承諾書にサインをしたら内定を辞退することはできないのでしょうか?今回は、内定承諾書に関するあれこれについてお話をします。

そもそも内定承諾書って?

ビジネスウーマン

「内定承諾書にサインをしたけどほかの企業に就職したい」と考える学生は多くいます。そもそも、内定承諾書とは一体どんな書類なのかをさらっとおさらいしましょう。

内定承諾書とは、その名の通り書面にて内定を承諾するかどうかを確認する書類のこと。たとえば、スマートホンを買い換えるとき、最後に契約書にサインをしますよね。内定承諾書も同じで、いわば契約書のようなもの。あなたの住所、氏名、捺印をする程度で、内定が成立したということになります。

内定承諾書にサインを求める企業の意図とは?

雑談する男女

数々の会社説明会や面接を受けてようやく獲得した内定。企業はなぜ、内定を出した応募者に対して内定承諾書のサインを求めるのでしょうか?企業は、数多くの応募者のなかから「我が社に必要な人材」と判断してあなたを選んで内定を出します。

しかし、学生が本当に入社してくれるかどうかはわからないもの。そこで、本人が本当に入社してくれるかどうかを判断するために内定承諾書へのサイン、捺印を求めます。つまり、正当な理由がない限りは入社してもらうために行います。

内定に関して、お互いが納得してるかどうかを確認しているということですね。しかし、ここで多くの学生が「え?内定承諾書にサインをしたら内定は辞退できないの?」ということを気にするのではないでしょうか?

内定承諾書にサインをしたあとでも辞退は可能?

面接

内定承諾書にサイン、捺印をしたけれども、やっぱり内定を辞退したいと思った場合、辞退をすることは可能なのでしょうか?結論から言ってしまうと、辞退をすることは可能です。理由については下記の内容があげられます。

法的な拘束力はない

内定承諾書には法的な拘束力はありません。内定承諾書へのサインによって、労働契約の成立を意味していることにはなりますが、民法627条においてはこう記されています。「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」。

さらに、「期間の定めのない労働契約については、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する」と定められています。つまり、内定辞退を申し入れてから2週間経てば、内定を辞退することは可能なのです。

内定辞退で損害賠償の可能性もある?

スマホを見る女性

上では、内定承諾書にサインをしたあとでも辞退をすることは可能だとお話をしました。しかし、ここで気をつけなければならないポイントがあります。それは、損害賠償を受ける可能性もあるということ。

損害賠償と聞くと不安になってしまうかもしれませんが、考えてもみてください。企業はひとりの応募者を採用するために○百万円の採用コストをかけています。

それだけではなく、採用が決まってからは、デスクやパソコンなどのさまざまな備品を新調したり、入社後に行う研修場所を確保したり、膨大な時間とコストをかけて新入社員を迎え入れる準備を進めています。

もし、内定契約書にサインをしているのに辞退をしたいと言われたら、企業にとってかなりの損失が発生してしまうのです。そのため、内定契約書によって労働契約が成立している場合は、準備にかかった費用を請求される可能性もあると言います。

実際に、内定辞退に関するトラブルは非常に多いようで、企業から損害賠償を請求されたという事例はいくつかあります。ここでその一部をご紹介します。

 

「とある会社で内定が決まり、内定契約書へのサインや捺印も済ませました。4月からお世話になるということで、顔合わせとして飲み会などにも参加させていただいていました。しかし、自己都合により内定の辞退を申し入れました。

先方からは、『おまえのために仕事に必要な備品を購入したり、研修場所を設けるなどしてお金がかかっているのに、自分勝手な都合で辞退とかふざけるな。取引先にも迷惑をかけているし、購入したものがすべて無駄になった。

その分のかかったお金は、きっちり賠償してもらう。内定承諾書へのサインだって済んでいるのに自己都合での辞退なんてとんでもない』と言われてしまいました。実際に損害賠償を請求されるのでしょうか?」(22歳・男性)

 

「就活中の大学4年生です。応募していた会社の最終面接で、内定をその場で言い渡されました。
そのあとすぐに人事の人に呼ばれ、その場で内定承諾書を書かされました。

SNSへの登録を強制され、ほかの会社は受けないこと、仮に辞退したら研修費や備品の購入などにかかった費用は全額支払うなど、細かく記載されていました。考える時間すらなくほぼ強制的に書かされました……。そのあと、研修があると言われそれも強制的に参加させられましたし。

朝に到着して深夜遅くまで研修がおこなわれ、睡眠時間は2時間ほどしか取れませんでした。しかも、お風呂に入りたくてもそれさえも許してもらえず……。

ネットで調べてみると、内定契約書にサインをしてから2週間経てば辞退を申し入れてもいいと書かれているのですが、損害賠償を請求されるのでしょうか?もちろん、研修にかかった費用は支払うつもりではいます。こんな状態の会社で働くなんて耐えられません……」(22歳・女性)

 

損害賠償を請求されたらどうすればいいの?

もし、損害賠償を請求されてしまった場合はどうすればいいのでしょうか?冒頭でもお話をしましたが、法律(民法627条)で「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」「期間の定めのない労働契約については、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する」とされている以上、支払う必要はないとされています。

むしろ、損害賠償を本当に請求する企業はほとんどありません。万が一裁判になった場合、訴訟にかかる時間とコストの方がはるかに損だと考えるからです。また、マスコミなどに取り沙汰された場合は、ブランドに傷がついて、イメージを低下させてしまう可能性があります。そんなリスクを犯してまで学生を訴える企業はないと考えていいでしょう。

内定辞退は可能だけど企業に迷惑がかかる

携帯を眺める女性

内定承諾書にサイン、捺印をしたあとに就職活動を続けることは差し支えないでしょう。しかし、サインをしているのにも関わらず「やはり辞退させてください」と辞退することで迷惑がかかることは間違いありません。

上でもお話をしましたが、企業は人件費や時間をかけて内定者を受け入れる準備を進めています。それが、内定辞退によってすべて水の泡になってしまうのです。法的な拘束力はないにせよ、企業に迷惑がかかるということだけは心にとめておきましょう。

内定承諾後に辞退するときは電話?メール?

携帯をいじる女性

上でも紹介した通り、承諾書を提出したあとに「やっぱり辞退したい」と考える就活生は多くいます。企業に迷惑がかかると十分理解をしているからこそ、言い出しにくいもの。しかし、誠意を伝えるためには電話での連絡がマナーですよ。

早めに伝える

内定を辞退したいと思ったら、速やかに企業に連絡を入れましょう。「内定承諾書へのサインも済ませているのに、辞退をしたら失礼なのではないか」「なにか言われたらどうしよう」と悩む気持ちはとてもよくわかります。

繰り返しになりますが、備品を買ったり研修の準備を進めたりと時間とコストがかかるもの。また、急な辞退によって欠員が出た場合は追加採用をしなければなりません。先延ばしにするとどんどん言いづらくなってしまうため、なるべく早く連絡を入れましょう。

電話で伝えるときのポイント

内定の辞退を申し入れるときは、必ず電話で連絡をしましょう。「あれこれ理由を聞かれたらどうしよう」「気まずい思いをするのは嫌だからメールでもいいかな」と思うかもしれませんが、電話連絡が最低限のマナーです。直接話すことで誠意が伝わるというもの。

また、メールだとクライアントや社内のメールに埋もれて気付いてもらえない可能性があります。トラブルにつながる可能性もあるため、内定辞退を伝える場合は必ず電話で連絡しましょう!

また、電話をするときは下記の内容に気をつけましょう。

・自分の大学名、氏名は必ず伝える

・採用担当者の都合を確認する

・内定辞退の理由を考えておく

例文

企業:お電話ありがとうございます。○○株式会社○○課○○がお受けいたします。

あなた:お世話になっております。私、○○大学経○○部の○○と申します。お忙しいところ恐縮なのですが、人事部新卒採用担当課の○○様をお願いできますでしょうか?

企業:かしこまりました。少々お待ちくださいませ。

あなた:私、○○大学経○○部の○○と申します。○○様、ただいまお時間よろしいでしょうか?

企業:お世話になっております。はい、どうぞ。

あなた:先日は内定のご通知をいただき、心より感謝しております。せっかく内定をいただきながら、身勝手なお願いで誠に苦しいのですが、本日は御社の内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。

企業:そうですか、それはとても残念です。○○様、差し支えなければ、辞退理由を伺ってもよろしいでしょうか?

あなた:はい。御社と並行して選考が進んでいた会社より内定をいただきました。最後まで悩んだのですが、自身の適性をあらためて考えた結果、その会社とのご縁を感じ、このような決断をさせていただきました。

企業:そうですか。大変残念ですが、承知いたしました。

あなた:本来ならば、直接お詫びに伺うべきところですが、お電話でのご連絡となり大変申し訳ございません。

企業:いえいえ、とんでもございません。わざわざご連絡をくださりありがとうございます。そちらの会社で頑張ってくださいね。

あなた:ありがとうございます。貴重なお時間をいただきながら、このような形となり、大変ご迷惑をおかけしました。それでは、失礼いたします。

 

内定辞退の理由はどうすればいい?

クエスチョンマーク

多くの人が悩むのが内定を辞退するときの理由。例文にもありましたが、「差し支えなければ理由を伺ってもよろしいですか?」という辞退の理由は必ず聞かれます。

きっと、これにどう答えればいいのかわからないという人が多いのではないでしょうか?職種、業界、適正などを理由とした丁寧な断り方を事前に準備しておきましょう。

職種を理由にする場合

応募していた企業より○○職での内定をいただきました。最後まで悩みましたが、○○職の仕事が私が以前からやりたかったことに一番近いと感じ、このような決断となりました。

業界を理由にする場合

○○業界の会社より内定をいただきました。最後まで悩みましたが、○○業界の仕事が私の適性に近いと感じ、このような決断となりました。

適性を理由にする場合

就職活動を行うなかで、自身の適性をあらためて考えてみた結果、別の会社とのご縁を感じました。誠に心苦しい限りですが、御社の内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。

手紙であらためてお詫びをしよう

パソコンの前で考える男性

内定辞退の旨を伝えたらあらためて手紙を送りましょう。手紙を送ることで、より誠実な印象を与えることができるのです。また、電話だけだと言った言わないの水掛け論になってしまいますが、手紙であれば証拠としてきちんと残しておけますよね。

お詫びの手紙は、電話連絡を入れてから速やかに送るのがポイントです。尚、手紙を送る際は下記の内容に注意しましょう!

・文章はすべて手書き

・縦書きで統一する

・修正液は使わない

・便箋は白色の無地を選ぶ

例文1

貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。先日は、お忙しいなか突然お電話を差し上げ大変失礼いたしました。誠に勝手ではございますが、自身の進路についてあらためて考えた結果、貴社の内定を辞退させていただきたく存じます。

就職活動におきまして、納得がいくまでさまざまな企業を訪問し、数社の就職試験を受けた結果、そのなかの一社から内定をいただきました。

最後まで悩みましたが、自身の適性と希望職種を考えてみた結果、貴社を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。

貴重なお時間を割いて選考をしていただいたのにも関わらず、お話を辞退させていただくのは、心苦しい限りですが、何卒ご容赦ください。

就職活動を通して、大変お世話になりましたことを心より感謝しております。末筆ながら、貴社のご発展をお祈り申し上げます。

敬具

平成○○年○月○日

○○大学○○学部○○学科4年
○○ ○○(あなたの名前)

 

例文2

拝啓貴社におかれまして、益々ご繁栄の事とお喜び申し上げます。

先日はお忙しいなか、お電話にてご対応いただきまして誠にありがとうございました。貴社から内定をいただけたことは非常に光栄な事と感じていましたが、自分の適正ややりたいことなど熟考を重ねた結果、ほかの企業様にお世話になることに決意いたしました。

このような結果となり誠に申し訳ございませんが、内定を辞退させていただきたく存じます。選考や面接と貴重なお時間を割いていただいたのにも関わらず、お話を辞退させていただくのは、心苦しい限りですが、ご理解いただけますと幸いです。

就職活動を通しまして貴重な体験をさせていただきありがとうございました。最後になりましたが、貴社のますますのご発展並びにご多幸をお祈り申し上げます。

敬具

平成○○年○月○日

○○大学○○学部○○学科4年
○○ ○○(あなたの名前)

 

内定辞退は悪いことではないけれど相手の気持ちを考えよう

内定承諾書にサインをしたあとで「やっぱり内定を辞退したい」と思ったら、先延ばしにせずにすぐに電話で連絡を入れましょう。また、電話連絡のあとに必ず手紙でのお詫びも忘れないようにしてくださいね。

内定を辞退すること悪いことではありませんが、相手に迷惑がかかることは間違いありません。精一杯、誠意を見せることがとても大切です。